入れ替わり短編小説集 1巻
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【冒頭試し読み】 顔のあたりだけが妙に火照り、首筋にじんわりと不快な汗が滲み出ているというのに、指先と足先はまるで氷に漬けたように冷たかった。 起き上がろうと床に手をついた瞬間、胸元で垂れ下がっただらしのない肉の重みが左右へ逃げ、胸郭を絞めつけるブラジャーのワイヤーが肋骨に食い込んで肘が滑る。 下腹部の生ぬるい空白感と、見覚えのない和室の匂いが、単なる体調不良ではなく「不可逆的な他人の肉体への定着」を冷酷に突きつけていた。 --- 「身体が入れ替われば、人生も入れ替わる」――そんなに単純な話ではない。 目を覚ますと、自分のものではない声、手足、骨格、体温。 そして、他人から当然のように押しつけられる、新しい名前と役割。 本作は、男女の身体が入れ替わった人々を描く、全6編の短編小説集です。 合わせて、各話5枚以上のイラスト(全30枚以上)を収録しています。 若く美しい理想の身体を手に入れ、新しい人生を楽しむ――そのような華やかな入れ替わりではありません。 胸の重さ、筋力の違い、服の締めつけ、冷えや火照り、生理現象、加齢した肉体。 自分の意思とは無関係に反応する身体と、外見だけを見て接してくる周囲の人々。 元の自分を守ろうとするほど、彼らは身体と日常から逃れられなくなっていきます。 収録作品 1.営業職の男性が、丁寧な暮らしをする女性と入れ替わる 竹林に囲まれた古民家で、女性としての生活を求められる男性。善意に満ちた周囲の人々が、少しずつ彼の逃げ道を塞いでいく。 2.女装男子と熟女が入れ替わる 美しい女性の服を着ることに憧れていた青年が手に入れたのは、若く軽やかな身体ではなく、年齢と生活を刻んだ重い肉体だった。 3.ギタリスト女子高生が、裏方の男子と入れ替わる 才能が宿るのは心なのか、それとも身体なのか。奪われた指先と、不器用な手の中で、それぞれの音楽が変わり始める。 4.自分の身体を持った男と、その男に愛される女になった自分 かつての自分が目の前にいる。しかし、その身体はもう別人のもの。そして自分は、かつての自分から女性として愛されていく。 5.探偵と泥棒の入れ替わり 追う者と追われる者の身体が逆転する。正体、立場、人間関係までも奪われていく、暴力と執着を描いた入れ替わり劇。 6.同級生と入れ替わるはずが、熟女になった 同級生との入れ替わりを期待していた少年が目覚めたのは、見知らぬ中年女性の身体だった。優しい家族と穏やかな日常の中で、元の自分が静かに削られていく。 本作について 本作が中心に描くのは、入れ替わった瞬間の驚きだけではありません。 新しい身体で服を着ること。 声を出し、歩き、食事をし、仕事をすること。 他人から別の性別や年齢として扱われること。 そして、元に戻れないまま日常が続いていくこと。 心が同じなら、以前と同じ人間でいられるのか。 身体に適応することは救いなのか、それとも敗北なのか。 劇的な解決や、すべてが元通りになる結末ではなく、身体に閉じ込められた人々の苦悩と諦め、その先にある日常を描いています。 このような方におすすめです ・男女入れ替わり、肉体交換ものが好き ・女装、女性化、年齢差のある入れ替わりに興味がある ・身体感覚を細かく描いた作品を読みたい ・入れ替わった後の生活や人間関係をじっくり読みたい ・明るいコメディよりも、重く不可逆的な物語が好き ・人格と身体の関係を扱う作品が好き ご購入前の注意 本作には、以下のような表現が含まれます。 ・身体や下着、生理現象に関する具体的な描写 ・加齢した身体や性差に対する否定的な感情 ・精神的な追い詰め、人格や役割の侵食 ・暴力、拘束、執着を伴う場面 ・元に戻れない、救いの少ない展開 明るく爽快な入れ替わりコメディではありません。 重苦しい心理描写や、身体に対する生々しい違和感を含む作品であることを、あらかじめご了承ください。 収録数:全6編 形式:EPUB電子書籍 著者:古都 礼奈














